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夫の入院と夫婦の挑戦⑤:「これは夢じゃない」——現実を受け止めた、ある冬の日のこと

夫が入院してからというもの、私はテレビを見ることができなくなっていました。

音や映像が心に響きすぎて、現実を直視するのがつらくなるのです。

その代わりに、刺繍やパッチワークをしながら、静かな映像と穏やかな音楽が流れる動画を見て過ごしていました。

12月に入ると、ラジオから流れてくる季節の歌が、私の心に深く沈んでいきました。

本来なら楽しいはずのあの時期、今まで大好きだったはずのあの雰囲気が、私にはとてもつらく感じられたのです。

「今年は一緒に過ごせるのだろうか」――そんな不安が胸を占めていました。

音楽が胸を刺すとき

ある日、病院の帰り道、元気の出るはずのある曲がラジオから流れてきました。

明るく前向きなメッセージを持った曲。

でも、その中の「これは夢じゃない」というような歌詞が、私の心を深く揺さぶりました。

「これが夢じゃないなんて……」

思わず自分の中で何かが崩れました。

毎日、苦しみと向き合いながら必死に現実を見つめていたはずなのに、

まだどこかで「これは夢であってほしい」と思っていたことに気づいたのです。

その瞬間、自分を責める気持ちが込み上げ、涙が止まりませんでした。

息子のやさしさに救われて

しばらくして、私は体調を崩し、いつも通っていた病院に行けない日がありました。

その日、息子が代わりに面会に行ってくれました。

帰ってきた息子が買ってきてくれた中に、チョコ味のカップアイスがありました。

何気なく食べたその一口が、とても美味しくて、ふと心がゆるんだのです。

その瞬間、不思議とこう思えたのです。

「これは夢じゃない。今なんだ。私は、今を生きている。」

 

今を生きよう

私は、そのアイスと息子のやさしさに救われました。

そして気づいたのです。

苦しいけれど、私は一人じゃない。

小さな一言や何気ない時間が、こんなにも大きな力になるんだと。

だから、心に決めました。

夫が退院したら、あのアイスを一緒に食べようと。

あの一口がくれた希望と、支えてくれた家族の思いを、ずっと忘れないように。

その日、私の目にほんの少しの光が戻ってきたような気がしました。

夫の入院と夫婦の挑戦⑥:涙の先に見えた光〜夫の入院と退院までの日々〜

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