年が明け、治療の方向性も見えはじめ、やっと一筋の希望が差してきた──。
そんな矢先、思いもよらない副作用に夫が苦しむことになりました。
今回は、そのときの私の思いと、夫の退院までの道のりを綴ります。
順調だった治療の矢先に
治療薬が変わったことにより、これからの見通しがようやく立ってきた。
そんな矢先、夫に強い副作用が現れはじめたのです。
それまで元気に食事を完食していた夫が、配膳の音を聞いただけで吐き気を催し、
大好きだった果物やお菓子さえも口にできなくなりました。
手足のしびれ、不眠・・・。
明らかに以前の夫とは違う。
先生は薬の副作用だと説明してくれたけれど、私は不安で仕方がありませんでした。
突然の電話と、崩れる心
ある朝、病院から突然の電話が鳴りました。
「ご主人がトイレで意識を失い、倒れました」と。
頭が真っ白になりました。
まさか、こんなことが・・・。
けれど、看護師さんによれば意識は戻っており、ナースステーション横の部屋に移動したとのこと。
先生から説明がある為、病院に来て欲しいとのこと。
実は倒れたのが夜で、病院側は直ぐに私に電話を掛けようとしてくれたが、夫から私が夜中に来るのは可哀想だから連絡は朝にして欲しいと頼んだとのことだ。
すぐに病院へ向かうと、車椅子に座った夫があっけらかんと笑っていました。
でも、私の胸の中は不安でいっぱいでした。
不安と、でも少しの安堵
夫はこの病気にかかってから、
術後左足に少し麻痺が残り、
おしっこも出なくなったり
傷口が化膿して熱がでたり大変だったが、
ひとつひとつ乗り越えて、ようやく目処が経って来たのにと思うと涙がこぼれそうになった。
だけど、病院の受付の方に心配かけまいと笑顔で面会の札を渡し外に出るとせきを切った様に涙が溢れた。
行き交う人に気にかけることも無く泣いた。
先生の説明では、しばらくは移動時に看護師が付き添い、車椅子での移動になるとのこと。
原因はまだ分からないけれど、検査では特に異常が見つからなかったと聞き、
ひとまず安心しました。
夫というと、その後も何度か倒れたのだが、ある日ふらっと倒れかけた時に、同室の元ラガーマン・Sさんに
「ガシッと抱きかかえてもらった」と笑って話していました。
「男の人に抱っこされたの、初めてや」と。
本当にこの人の能天気さに、救われる気持ちさえしました。
夫が退院に向けて残したもの
この入院中、夫は趣味のお菓子作りや料理のレシピを、
なんと400件以上もノートに記していました。
健康を意識したレシピが4冊のファイルにぎっしり。
「退院したら、ゆうぽぽに作ってあげたい」と言っていたけれど、
副作用が強く出始めてからは、気力さえ失われていたように見えました。
そんな中、娘が入院時に渡してくれた本が、夫の心を少し支えてくれました。
全10冊のうち、特に原田瑞樹さんの本が面白かったとのこと。
読書の時間が、心の逃げ場になっていたようです。
退院の日、家族の力
退院が決まり、当日は息子も病院に来てくれました。
先生の説明を一緒に聞いてくれるだけで、こんなにも安心できるものなのですね。
頼もしい存在に、私は少し肩の力を抜くことができました。
夫と息子が駐車場へ向かっている間に、私は急いでファミマへ。
買ったのは、小さなアイスクリーム。

やっと…やっと、これを食べられる。
勇気リンリン、力がモリモリ。
不安は消えないけれど、今この瞬間を楽しもう。
おわりに〜新しい一歩
夫はまだ本調子ではありません。
けれど、一緒に家に帰れることが、どれだけ幸せなことか。
泣いて、悩んで、でも少しずつ前を向く。
そんな毎日が、私たちの「新しい人生のスタート」なのだと思います。
次回で、2023年〜2024年にかけての夫の入院に関するお話は最後となります。